2013年10月29日火曜日

リング

リング  the Ring
鈴木光司
角川ホラー文庫




こんにちは。
今回は、当時一種の社会現象にもなったリングを読んだので、記録します。

スラスラ読めました。
貴志祐介の黒い家と比較してみると不気味さでは黒い家の方が不気味だと思いました。

ミステリー性が強いからでしょうか。

睾丸性女性化症候群というのは現実にあるのでしょうか。

竜司という登場人物のインパクトが強くて、とても頼もしい相棒だっただけに最後死んでしまったのが残念でした。

映画版のリングがどんな感じか忘れてしまいましたが、映画版よりは恐怖心を喚起されませんでした。始めて観たのが子供の頃だったからでしょうか。

浅川と竜司が、ビデオが念写によって記録され、一瞬映る黒い幕が貞子の瞬きであることを突き止めたシーンが最も不気味でした。

梶井基次郎に触れたり、サナトリウムや結核にも言及が及びました。

自作の、らせん、も読んでみたいです。

2013年10月24日木曜日

ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 下

ミレニアム  ドラゴン・タトゥーの女  下
スティーグ・ラーソン
ヘレンハルメ美穂  岩澤雅利訳
早川書房





 一気に読んでしまいました。

少しずつミカエルがハリエット失踪事件の謎を解明していくのがスリリングでした。

第17章でようやくミカエルはリスベットの存在を知ります。
この時はまだ、自分がリスベットの手によって身元調査をされていたことを知るにとどまります。
このあとどのように対面するのか気になりつつ読み進めました。

348ページで、ミカエルがリスベットに友情について語る場面に感動しました。

ミカエルいわく、友情は敬意と信頼に基ずいていて、双方がこの感情を持っていないと友情は築けないと言います。
最終的にリスベットはミカエルに恋をするのですが...。

リスベットが銀行を回る時の変装シーンが、映画を先に見ていたので明瞭にイメージできました。
ギャップがいい感じでした。

第2部と第3部は、どんなストーリーか全く知らないのでスラスラ読めるか不安ですが、楽しみでもあります。

本屋さんに行かなくては。

2013年10月22日火曜日

深夜特急2  マレー半島・シンガポール

深夜特急2  マレー半島・シンガポール
沢木耕太郎
新潮文庫



バンコクでは、香港の時に感じた熱狂を感じることはできていません。

マラッカ海峡に沈む夕陽は大きくて美しいらしいです。

第6章  海の向こうに
この章の2節目に、沢木耕太郎がなぜ旅に出たのか、思うところを書いています。

一巻同様、サラッと読み終えました。
この巻では、香港で得た熱気をバンコクやシンガポールでも無意識のうちに探し求める沢木耕太郎の姿が描かれています。
しかし、タイやシンガポールでは、彼の望むような活気はなく、少し物足りない雰囲気が彼の中に漂っています。

ただただ、僕が思うのは、僕もアラウンド・ザ・ワールドしてみたいということです。

末巻に掲載されている、沢木耕太郎と高倉健の対談も読み応えがありましたが、なんだか二人ともカッコつけてるようで、ツンツンしている印象を受けました。

近いうち、3巻を買って読みたいです。

2013年10月19日土曜日

素数の音楽


素数の音楽
マーカス・デュ・ソートイ
富永 星  訳
新潮文庫



こんにちは。今回やっと、『素数の音楽』という本を読み終えたので、少し書いておこうと思います。
読み終えての感想は、「数学にはロマンがある」ということを感じる事ができました。


リーマンとフェルマーなど、様々な数学者が登場します。
そして様々な名言も登場します。
2章で、フィボナッチ数列や、13年蝉や17年蝉が登場します。
13年蝉と17年蝉が同時に現れるのは、何年に一度でしょうか。
答えは、17x13=221
221年に1度です。
よくできていますね。
公務員試験を幾つか受験したことがありますが、13年蝉と17年蝉を題材にした問題あったと思います。

4章に入ってからは、今までなんとなく理解できていた内容でしたが、4章の内容は難しくて理解できませんでした。
もっと数学の知識が必要かもしれません。
リーマン予想、ゼータ関数、オイラーの素数を使ったオイラー積など、説明があったのですが、これらがどう関係しているのか、さっぱりでした。
ゼータ関数の風景も、風景にすることでどんな意味があるのか、その興奮は僕には伝わりません。

しかし、なんとなくわかったことは、ゼータ関数は素数を別の姿として眺めることができる鏡ということでしょうか。

リーマンが目にしていたのは、数の世界とリーマンのゼータ関数が作る世界とを隔てる鏡に映った素数の像だった。
とあるように、ランダムに登場する素数ですが、ゼータ関数をなんらかの形で素数を見る道具とすれば、その中にもパターンがある、という風に僕は理解しました。


用語メモ:ガウスの素数定理
自然数の中に素数がどれくらいの割合で含まれているかを述べる定理。

リーマンの名前は聞いたことなかったのですが、素数の音楽を読んでその凄さがなんとなくわかってきました。

数学において、素数の解明がとてもロマン溢れることもわかってきました。
素数の音楽では、そのロマンを追い求める数学者たちの軌跡が描かれていました。
難しくて理解できない部分もありましたが、不思議に読み進めることができました。
それは、この本が、数学の参考書という形ではなく、小説風に書いてあるからだと思います。
幾人もの数学者たちの努力を垣間見ることができた気がしますし、数論に興味を持つことができました。

リーマン、39歳の若さで亡くなっているんですね。
ほんとに、天才には早逝する人が多い気がします。

リーマンの家政婦さんが、リーマンの残したメモを捨ててしまったみたいです。
そのメモが残っていたら、どうなっていたでしょうか。

用語メモ:フェルマーの最終定理


nが2より大きい自然数であれば
n+Yn=Zn
を満たす、自然数X、Y、Zは存在しない。


素数はその本性を数の宇宙の奥底深く隠していて、人間の計算能力をはるか超えたところまで探りを入れなければ、その本性を目にすることはできない。

果たして、次に現れる素数を予想することができる公式を目にすることは人類にできるのでしょうか。


第6章で登場するインド人ラマヌジャン。
彼は初等教育を受けずして、数学界で名を馳せることになります。
彼が行った数を分割する方法。
5を分割する方法はいくつあるのか。
その方法は7つあります。

5
1+4,2+3
1+1+3,1+2+2
1+1+1+2
1+1+1+1+1

このように分割することを分割数と言います。
ラマヌジャンも32歳という若さで亡くなっています。


ベルトランの仮説

ある数Nについて、2Nまで数え上げれば素数が現れる。


サミュエル・I・クリーガーという人は、大きな素数を見つけるのに人生を費やした人物です。
現在発見されている1番大きな素数
231584178474632390847141970017375815706539969331281128078915826259279871
を見つけたのですが、47で割れることが判明しました。
素数に取り憑かれる人は多いようです。

方程式に解があるかどうかを判断するプログラムはいまのところ存在しないようです。

第9章では、コンピュータ時代の到来、という章立てでザギエの補助グラフが紹介さてていましたが、なぜグラフが水平軸と交わることでリーマン予想が成り立たなくなるのかわかりませんでした。


用語メモ:
メルセンヌ数(メルセンヌすう、:Mersenne number)とは、2のべきよりも 1 小さい自然数、すなわち 2n − 1(n は自然数)の形の自然数のことである。

第10章では数学と物理学の融和が起こります。そこで、リーマンがどれほど時代の先を行っていたのかを目の当たりにします。


第12章

byコンヌ
ほんとうに何かを見つけたいと思うのなら、ひとりでなくてはならない。

小川洋子さんの感想

byセルバーグ
最後には、解決できると思う。証明不可能な問題だとも思わない。だが、証明が人間の脳ではついていけないくらい複雑である可能性はある。

この本のおかげで数論という科目に、今までとは異なるイメージを持つ事ができました。 

2013年10月14日月曜日

遺書

こんにちは。

芥川龍之介の遺書を読みました。

子供たちへ宛てた内容に、

四若しこの人生の戦ひに破れし時には汝等の父の如く自殺せよ。但し汝等の父の如く 他に不幸を及ぼすを避けよ。

とあり、自分の子供に、父のように自殺せよ、と言い切れる芥川龍之介の精神に唖然としてしまいました。

でも、意外だったのは、遺書自体からはそれほど嘆きに打ちひしがれているような印象は伝わってきませんでした。

芥川文子宛てには、私情的な事ではなく、芥川絶命後に行うべき手続きが書いてあり、妻をおいて世を去ることにたいする後ろめたさは感じていなかったのだろうかと思いました。

この世で生きることが辛いために世を去る、というよりは、何か目的を果たすべく世を去る、というような意思を感じました。

2013年10月11日金曜日

死後

死語
芥川龍之介
青空文庫


主人公が、夢の中で身近な人物とやりとりし、考えを巡らせ、夢から覚めた後にアダリン錠という睡眠薬を飲んで眠りにつく話。

死語というタイトルは主人公が夢の中では死人であることから来ているのではないでしょうか。

妻にたいして憤慨するシーンと、どこまでも続く枳殻垣の道を歩く様子が、なぜか切なく感じました。

最後に睡眠薬として登場するアダリン錠には、もしかしたら睡眠薬以外の何か別の意味があるのではないかと疑いたくなりました。


将来にたいするぼんやりとした不安。そんな雰囲気を「河童」よりも感じました。

河童/合理的、同時に多量の人間味


河童
芥川龍之介
青空文庫

これまで読んだ(と言っても少しですが)芥川作品で始めての、ですます文体でした。

Quax, quax

とは、河童の鳴き声なのでしょうか。
どことなく、フランス語のように読めなくもない気がします。

Quax, Bag, quo quel, quan?

やっぱりフランス語?

この物語は章立てが短くて、隙間時間に少しづつ読むことができました。

Quaは河童語で然りという意味だそうです。

哲学的なセリフが多数出てきましたが中でも

"成すことは成し得ることであり、成し得ることは成すことである。"

という言葉は印象深く思います。
つまりどういうことなのでしょうか。

所々カッコ書きで説明が付されているところに芥川の親切心を感じました。

トック遺書に書いてある言葉、
「いざ、立ちてゆかん。娑婆界を隔つる谷へ。 岩むらはこごしく、やま水は清く、 薬草の花はにおえる谷へ。」

には、何らかの決意を感じます。この世を去ることにたいする恐怖心はあまり感じられませんでした。

トルストイとニーチェの本は、いつか読んでみたいと思います。

主人公=トック君ということなのでしょうか。
芥川龍之介はこの物語を書いた後に自殺をしているらしいのですが、主人公を通して芥川龍之介の社会に対する考えを読み取ることはあまりできませんでした。

後半、河童の世界に戻りたいのではなく「帰りたい」と書いていることなど、何か人間世界が嫌なのかな、と思いました。

再読してみたいと思います。


合理的、同時に多量の人間味
──相互印象・菊池氏──
芥川龍之介
青空文庫

菊池と自分の境涯を比べている自白的な語りが綴られていました。

2013年10月6日日曜日

眼にて云ふ/おきなぐさ

眼にて云ふ
宮沢賢治

眼にて云ふ、の語りては、死の淵にいる様子です。

それでも、医者の見ている景色よりも、綺麗な景色が見えるのはなぜなのでしょう。

仮説1:もう自分は助からないと悟った。
仮説2:自分は助かると安心した。


もう死んでも文句は言えない、と言っているところから、既に生きるのを諦めているような感じがします。

一体この語り手に何があったのか、なぜ出血しているのか、その前後は書かれていないので、そこは読み手の想像に任せるということでしょうか。

詩は、そういうところに特徴があるのかな、と思いました。


余談:宮沢賢治も37歳でこの世を去っているんですね。
昔の文豪たちは、どうも世を去るのが早い気がします。



おきなぐさ
宮沢賢治
青空文庫

植物が点に向かって飛んで行き、変光星になる、という話。
自然界のものが擬人化されています。


奇麗なすきとおった風がやって参りました。まず向こうのポプラをひるがえし、青の燕麦に波をたてそれから丘にのぼって来ました。



風が向かってくる様子が目に浮かび、有る意味、おきなぐさの命を奪う刃のようにも思えます。

ミレニアム1 ドラゴンタトゥーの女 上

ミレニアム1 ドラゴンタトゥーの女 上
スティーグ・ラグーソン
ヘレンハルメ美浦  岩澤雅利  訳

ミカエルには女性的、リスベットには男性的な性格を持たせたらしいです。(Wikipediaより)

ミカエルは女性にモテすぎて、羨ましかったです。

リスベットが弁護士に仕返しする様子は映画に生々しく描かれています。

映画のリスベット役をしているルーニー・マーラの白い肌が、スウェーデンの雪舞う雰囲気にとてもマッチしていました。

本の感想ですが、僕は映画の方を先に見たので、映像がフラッシュバックしてきました。

一巻目の上で、まだミカエルとリスベットが正式に対面していないのが、映画と小説の違いというか、流れる時間の違いを感じました。

Apple製品が時々登場し、日本メーカーの東芝のノートパソコンも、一瞬登場します。

一気に読めて、続きをはやく購入したいです。

2013年10月3日木曜日

蜘蛛の糸/孤独地獄

蜘蛛の糸
芥川龍之介
新潮文庫


登場人物:
犍陀多と御釈迦様

まとめ
自分だけ助かろうとして、糸が切れて地獄へ落ちるという話。

感想:もし犍陀多が後から上ってきた罪人たちも一緒に行こう、という気持ちで登っていたら、蜘蛛の糸は切れなかったのだろうか。


孤独地獄
芥川龍之介
青空文庫


まとめ
大叔父が母にした話を聞いて、芥川が思ったことを、おそらく書いたもの。
地獄には3つの地獄があり、そのうちの孤独地獄、のお話。

読み進めていると、結末が予想できる物語でした。芥川龍之介も、孤独だったのでしょうか。

或意味で自分も亦、孤独地獄に苦しめられてゐる一人だからである。

この締めくくりに、ぐっときました。


感想:孤独地獄は彼の晩期の作品なのでしょうか。晩期には自白的な作品が目立つとWikipediaに書いてありました。
彼も35才で亡くなったことは知りませんでした。
しかも自殺ということには多少驚きました。
初期の作品から読んでいこうと思います。
次は「羅生門」あたりを読み直してみたいと思います。

2013年10月1日火曜日

何もかも憂鬱な夜に

何もかも憂鬱な夜に
中村文則
集英社文庫

冒頭
一羽の赤い鳥を買っていた。
で始まります。

全体的に暗い雰囲気の内容です。
死、という単語が多く出てきます。
この物語のテーマと関係があるのかもしれません。



死刑執行の描写がある場面は、映画のダンサーインザダークの最後の場面を思い出しました。

主人公は刑務官をしているのですが、刑務官の仕事は僕じゃ務まらないと思いました。
著者の中村文則さんは、自分が刑務官になったわけでもないのに、なぜ独房や収容所の様子をこれほどリアルに書けるのか、興味を持ちました。

この物語登場する人物のような生い立ちや、経験をしたことがある人、そして現在携わっている人がいるとして、僕は彼らにたいしてどんな風に思えばいいのかわからない、と思いました。

僕は、どちらかというと普通の、普通よりは少し変わった?家庭に生まれました。
孤児だったり、犯罪に手を染めたりしたことはないし、学校も、行きたくないと思った事はありましたが、毎日普通に通っていました。
何もかも憂鬱な夜に、の登場人物のような経験に、有る意味、こんなことを言ってはいけないのかもしれないけれど、そんな経験をしてみたいと少しでも思ってしまいました。

所々に性的描写がありましたが、不快なものではありませんでした。
この物語に登場する恵子という女性、または時々登場する女性の存在が、なんだか物語が醸し出す息の詰まりそうな雰囲気に、鮮やかな安心できる色を添えていると思いました。
176ページあたりの、山井に向けた言葉は、おそらく主人公自分自身に向かって言っているように思いました。

末巻の、又吉直樹さんのように、僕にとっても、この作品は特別なものになりました。

一気に読めた作品です。